書く音 from Sound One Challenge 2023


◇テストの背景

Sound One Challenge 2023の企画時、
「生活の中の音」の候補として挙がったのが「書く音」でした。
年齢やバックグラウンドを問わず、誰しも体感したことのある音だと思います。
色々な音を集めて、どのような評価がされるのか、試してみることにしました。

◇使用した評価語

今回は音源を先に決めたので、8種類の音を改めて聴き直して、
どんな印象を持つか、どんな特徴を感じるか、言葉に書き出して評価語の候補にしました。
身近なメンバーに回答をお願いして事前に数回Audio Testを行い、
2種類の評価語を決定しました。
 
シャープな-ソフトな:高い音が目立つか、特に目立つ音は無いか?
ザラザラした-スムーズな:ザラザラ感、滑らかさ、引っ掛かりの有無が評価できるかも?

◇使用した音源

静かな部屋で、実際に筆記具で書く操作をしながら収録を行いました。
今回は、楽しさに重きを置くことに決めて、
聴いてみて音が似ているものを除き、8種類を選抜しました!
 
①HB鉛筆
②万年筆
③油性ボールペン
④水性マーカー
⑤水性ボールペン1
⑥筆ペン
⑦水性フェルトペン
⑧水性ボールペン2
 
 

◇説明文(教示文)

[STORY]
あなたは近所の文房具屋さんで「毎日使うためのペン」を探しています。
適当に選んで試し書きをしてみると、
ペンによって、色々な音がすることに気づきました。
 
[Audio Testについて]
いくつかの「色々なペンで直線を書く音」が流れます。
それぞれの印象を2つの評価軸で回答してください。
今回は「主に文字を書くためのペン」を想定してください。
(絵を描くためのペンではありません。)

◇テストURL

こちらからテストを体験できます。
 
  • アカウントをお持ちでない方は、ゲスト回答がご利用いただけます。
  ログイン画面下部に表示される「アカウントを作成せずに回答する」をクリックください。
 

◇テスト結果 

テストの結果をご紹介します。

[テスト回答] 

2種類の評価語により、それぞれの音の特徴が確認できました。
 
回答数が多いので、グラデーション(緑色(回答数少)~赤色(回答数多))で
可視化します。
 
例えば、特に目立つのは…
 
【万年筆】
どちらかというとザラザラ、シャープ。
ただし、真ん中の「やや」にあたる評価をしている方も一定数見受けられます。
 
【筆ペン】
大半の方が「スムーズ」と評価。
シャープ-ソフトは意見が分かれましたが、
回答数としては「かなりスムーズ」で「かなりソフト」と回答した方が
なんと149名もいらっしゃいました。
 
全ての音において、回答数の多い箇所、少ない箇所がそれぞれ見られ、
「書く音」という難しい評価でありながら、特徴が明らかになりました。
 
各ペンの音の特徴をざっくり分類すると、
スムーズでソフトなのは筆ペンと水性フェルトペン、
どちらかというとスムーズで、シャープ寄りなのがHP鉛筆と水性マーカー、
どちらかというとザラザラしていて、シャープ・ソフトは意見が割れるのがその他のペンでした。
 

[物理パラメータとの相関]

 
 
 
 
  • 評価語1
高い音、特に2k~5kくらいまでで、高い相関が出ています。
この辺りの音は、耳で聴いても「高い」と感じることが多い高さです。
高い音が大きいとシャープに、逆に小さいと、ソフトに感じる、という結果になりました。
 
  • 評価語2
低い音、特に100~1kと、O.A.(オーバーオール、音の高さを限定しない音の大きさ)が、
相関が高いです。
100Hzはそれなりに低い音なので、聞こえづらい場合もありますが、
ともかく相関係数から読み取れるのは、100~1kくらいまでの音、
あるいは音の大きさ自体が大きいとザラザラと、逆に小さいと、スムーズに感じる、
という結果です。
 

◇今後のアプローチ

結果から、“仮説”が作れます。
例えば「シャープな音のペンを作る」のが目的の場合、
今回Audio Testに使った音の、2k~5k付近の音の大きさを変えてみる。
もし、2k~5k付近の音の大きさを大きめにしたときによりシャープな評価が増え、
小さめにしたときにソフトな評価が増えるようなら、
この仮説は、少なくとも今回使った音のバリエーションの中では正しいと言えます。
 
一般的には、こうした仮説に基づいて製品を改良したり、
音を評価するための指標(計算すれば、どのくらいシャープか分かる)を作成したりして、
活用されていきます。
 

より詳細なレポートはこちらをご覧ください。

Sound One Challenge 2023 結果発表はこちら